日本の法律のうち、野生生物の捕獲や取引の規制、生息地などの直接的な保護を目的としたものに以下の法律があります。
●種の保存法(絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律 1992年施行)
第8回ワシントン条約締約国会議の京都での開催や生物多様性条約採択を前に、ワシントン条約よって国際取引が原則として禁止された種の取引を規制するために制定された「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡の規制等に関する法律」では対象となっていない、日本国内の絶滅のおそれのある種も対象とした法律として制定されました。この法律では、対象となる種を「国内希少野生動植物種」とワシントン条約・渡り鳥等保護条約に基づく「国際希少動植物種」に区分されています。指定種の捕獲や所持、流通等の規制による個体の保護、開発を制限する生息地保護、保護増殖が三本柱になっています。しかし、「国内希少野生動植物種」は2009年現在81種とIUCNのレッドリストに掲載された日本の絶滅のおそれのある種325種と比べても少なく、罰則規定も緩いことが問題になっています。
●鳥獣保護法(鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律 2002年全部改正)
銃猟の規制が主目的で、鳥類と哺乳類が対象です。乱獲を規制していますが、鳥獣保護区、休猟区など以外では狩猟が可能です。また、生息地の悪化や分断などによる種の減少までは防止できません。なお、土地所有者からの申し出があれば、比較的容易に鳥獣保護区の指定が解除されることがあります。
●水産資源保護法(1951年施行)
ヒメウミガメ、オサガメ、シロナガスクジラ、ホッキョククジラ、コククジラ、スナメリ、ジュゴン、都道府県漁業調整規則によって定められた内水面(川や湖)のサケやマスなどを保護対象としています。捕獲の禁止によって個体数の回復を目的としており、保護水面を設定して禁漁やその期間を定めています。ただし、水産資源として価値のない魚類や水棲生物は対象外になっています。
●生物多様性基本法(2008年施行)
生物多様性保護の基本原則、需要な政策手段を抽象的に定めたものになっていて、直接的に法的な効力を発揮するものではありません。しかし、生息環境も含め野生生物を包括的に保全の対象としており、生物多様性の損傷や悪化の防止、多様な関係者の協働、事業計画段階での環境影響評価の実施、生物多様性関連の法律の見直しなどを定めた重要な基本法になっています。
●ワシントン条約
かけがえのない動植物の絶滅を回避するため、野生動植物の国際取引の規制が求められ、1973年にアメリカのワシントンにおいて「絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約」が採択されました。ワシントン条約では、国際取引が規制される野生動植物の種を「附属書I・II・III」に区分して掲載しています。附属書Iに掲載される種は最も絶滅が危惧されているものであり、商業目的の国際取引が原則禁止されています。
| 附属書I | 国際商業取引は原則禁止 (約800種) |
スローロリス(ペット) オランウータン(ペット) ゾウ(象牙が印鑑やアクセサリー) トラ(骨などが漢方薬の原材料・強壮剤、毛皮が装飾品) サイ(角が漢方薬の原材料) ツキノワグマ(胆のうが漢方薬の原材料) クジラ(食用) コンゴウインコ(ペット) タイマイを含む全てのウミガメ(べっ甲製品、剥製) ワニ類多数(革製品) オオサンショウウオ(ペット) チョウザメ類多数(キャビアを食用) アジアアロワナ(ペット) サボテン類多数(観賞用) ラン類多数(観賞用) アロエ類多数(観賞用) |
|---|---|---|
| 附属書II | 商業取引可能だが輸出許可書が必要 (約30,000種) |
カバ(牙が置物やアクセサリーの原材料) ホッキョクグマ(剥製) 付属書I・掲載種以外のサル類全て(実験用、ペット) 付属書I・掲載種以外のネコ類全て(毛皮、ペット) 付属書I・掲載種以外のオウム類全て(ペット) アジアハコガメ類全て(ペット、食用) カメレオン |
| 附属書III | 自国の政策上、国際取引を規制 (約200種) |
カナダのセイウチ(牙が置物やアクセサリーの原材料) ガーナに生息する種多数、など |
*この規制に違反して野生生物を日本へ持ち込もうとすると…
条約に違反すると日本の「外国為替及び外国貿易法」「関税法」に違反したことになり、処罰されます。税関で輸入が差し止められます。そして「関税法」違反として、没収と罰金の支払いを通告されます。拒否すれば検察官へ告発され、刑事裁判になります。
税関でチェックを受けずに持ち込んだ場合の罰則は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金です。さらに、条約違反の輸入は外国為替及び外国貿易法違反ともなり、100万円以下の罰金または1年以下の懲役の罰則が定められています。
*附属書I掲載種を国内で買ったら…
ワシントン条約の付属書Ⅰに掲載されている野生生物については「種の保存法」で、国内取引も原則的に禁止されています。ただし、ワシントン条約上の例外措置として輸入されたものについては、政府に登録をして売買することができます。条約違反で輸入されたものを国内で買ったり、登録されていないものを買ったりすると「種の保存法」違反になります。ただであげたりもらったりする場合も同様です。1年以下の懲役又は100万円以下の罰金という罰則があります。
●生物多様性条約
国際自然保護連合(IUCN)などの環境保護団体の要請を受け、1987年から国連環境計画(UNEP)が準備を開始し、1992年リオ・デ・ジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で調印式が行われました。ワシントン条約やラムサール条約のように、特定の行為や特定の生息地のみを対象とするのではなく、野生生物保護の枠組みを広げ、地球上の生物の多様性を包括的に保全しようと作られたことが特徴です。
生物多様性条約では、生物の多様性を「生態系」「種」「遺伝子」の3つのレベルでとらえ、①生物多様性の保全、②生物多様性の構成要素の持続可能な利用③遺伝資源の利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分を目的としています。

携帯サイトQRコード