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ワシントン条約  |  日本の法律

野生生物を守る条約・法律(日本の法律)

野生生物保全に関する日本の法律

法律は、条文の最初にその法律の目的が書いてあります。その書き方を見ると、法律によって直接やろうとしていること(直接の目的)と、それを通じて究極的に達成しようとしていること(究極の目的)に分けて書いてあることが多いのです。少なくとも直接の目的の中に守られるべき対象として野生生物が含められていれば、「野生生物の保全に関する法律」といってよいでしょう。
では、日本の法律の中で野生生物の保全に関する法律はどれでしょうか。

直接の目的 究極の目的
種の保存法 絶滅のおそれのある野生動植物種を保存することより良好な自然環境を保全すること 現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること
鳥獣保護法 鳥獣保護事業実施、鳥獣による生活環境・農林水産業・生態系に対する被害防止、猟具の使用による危険の防止をおこなうこと 生物多様性の確保、生活環境の保全、農林水産業の健全な発展を通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活を確保し、および地域社会を健全に発展させること
文化財保護法 文化財を保存・活用すること 国民の文化的向上に資すると共に、世界文化の進歩に貢献すること
自然環境保全法 自然環境の保全の基本的な事項を定め、自然環境の適正な保全を総合的に推進すること 現在及び将来の国民の健康で文化的な生活の確保に寄与すること
自然公園法 すぐれた自然の風景地を保護するとともに、その利用の増進を図ること 国民の保健、休養及び教化に資すること
動管法
(動物の愛護及び
管理に関する法律)
1.国民の間に動物を愛護する気風を招来すること
2.(飼育)動物を管理すること
1.生命尊重、友愛及び平和の情操を育てること
2.動物による人の生命身体及び財産に対する侵害を防止すること
自然再生推進法 自然再生の基本理念を定め、実施者等の責務を明らかにし、自然再生を推進するために必要な事項を定めること 生物の多様性の確保を通じて自然と共生する社会の実現を図り、あわせて地球環境の保全に寄与すること
外来生物法 外来生物の取扱いを規制するとともに、その防除の措置を講ずること 生物の多様性の確保、人の生命及び身体の保護並びに農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、国民生活の安定向上に資すること

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(種の保存法)

絶滅のおそれのある種は自然環境の重要な一部であり、それを保全することは国民の生活の根本にかかわる大切なことなので、それを保全(保存)しようとしています。 「自然環境の要素としての野生生物を保全する」ことが正面からうたわれている日本の法律は「種の保存法」だけです。

鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護法)

日本には、600種を超える鳥獣類が生息していますが、乱獲、乱開発による生息環境の攪乱によって大きく衰退してきました。そこで、野生鳥獣(鳥類と哺乳類)を狩猟資源として、また農林水産業に利益をもたらすものあるいは害悪をもたらすものとして管理しようとするのがこの法律です。

文化財保護法

国民の文化的向上及び世界文化の進歩への貢献のために文化財を保存・活用しようとしています。野生生物に関連する言葉は出てきません。野生生物やその生息地・生育地も、「天然記念物」として文化財に指定することができます。

特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律(外来生物法)

海外から日本に導入された生物のうち一部のものが、生態系、人の生命若しくは身体又は農林水産業への深刻な被害や、そのおそれを生じさせています。そこで、それらの被害を防止しようとしています。在来の生態系、したがってそれを構成する野生生物種と種間・生物非生物間の相互関係も守るべき対象のひとつになっているといえるでしょう。

「鳥獣保護法」と「文化財保護法」は、野生生物を守るべき対象としています。その意味で、野生生物保全に「関する」法律とはいえます。しかし、自然環境の要素としての野生生物を保全する、という視点に立っていない点で、野生生物の保全を「目的とした」法律とは言い難いと考えられます。
そのほか、野生生物を守るべき直接の対象にしているわけではありませんが、自然環境の保全を目的とするものとして「自然環境保全法」が、自然環境の保全や利用に大きく関連するものとして「自然公園法」「自然再生推進法」があります。また、生命尊重・飼育動物による人間への危害防止の観点から哺乳類・鳥類・爬虫類を対象とする「動物の愛護及び管理に関する法律」(動管法)があります。

野生生物を守る法律の問題点

種の保存法の内容とその問題点

「種の保存法」では絶滅のおそれがある種として指定されたものの捕獲や譲渡が規制されます。譲渡規制の対象には、国内の種と、ワシントン条約などの国際条約で国際取引が規制されている種で例外的に日本に入ってきたものも含まれます。また、生息地を保護区に指定することもできます。非常に数が減ってしまったものなどについて、保護増殖事業を行うこともできます。しかし多くの問題点を抱えています。

1. 対象に指定した種が少ない
現在の法律では、基本的に絶滅寸前にならないと保全の対象にならない。現在指定されている種は、日本版の「レッド・リスト」(絶滅のおそれのある野生生物のリスト)に掲載された種の3%にも満たない。

2. 地域的な絶滅は対象外
ある地域(例えばある都道府県)では絶滅寸前でも、他の地域にたくさんいれば保全の対象にならない。保全されるのはあくまで「種」のレベルで、地域個体群は保護の対象とされていない。

3. 効果の薄い、わずかな保護区
これまで指定された保護区はミヤコタナゴの生息地などわずか8カ所(2007年4月現在)で、面積も限られている。しかし、そもそも絶滅のおそれのある種の生息する場所のすべてを保護区にすることは、開発が規制されることに対して官庁や開発業者、土地の所有者などからの反対があって現実的に難しく、保護区の設定は進まない。保護区にも重要な役割はあるが、「線引きされた」場所の中でしか、生息地の破壊を規制できないというしくみ自体も問題。

4. 流通の規制が甘い
野生生物の譲渡を規制するのは、違法なものが適法なものにまぎれて流通しないようにして密猟を防ぐためである。しかし種の保存法では、鳥獣保護法や漁業法によって適法に捕獲されたクマやクジラ類についての譲渡は自由。そのため流通している商品のうち、密猟による違法なものを見分けることは困難。
また毛皮など体の一部や、熊胆(ゆうたん)入りの漢方薬など製品に形を変えると、規制の対象外になってしまう場合が多い。
さらに違法に捕獲されたものや密輸されたものも、所持しているだけでは違法にならない。

鳥獣保護法の内容とその問題点

鳥獣保護法に書かれているのは、狩猟してよい鳥獣の種類の限定、猟期の制限(本州のほとんどでは11月15日から翌年2月15日まで)、猟法(わなの種類の限定)の制限、狩猟が禁止される鳥獣保護区の設定、狩猟に加え干拓など生息地を大きく改変してしまうような行為を禁止する鳥獣保護区、特別保護地区の設定、狩猟以外の捕獲は許可制にしていることなどです。

もともと農林水産業振興のための法律なので、農林水産業に有害な鳥獣は国あるいは自治体の捕獲許可によって駆除されます。捕獲数の上限を制限するしくみはありません。有害捕獲の捕獲許可権限は都道府県から市町村へと続々と委譲される状況にあります。市町村では特に、野生鳥獣の管理に関する専門家の育成・配置、予算措置の手当てが薄いので、場当たり的で、過剰な捕獲をまねくおそれがあります。また、ニホンアシカ、アザラシ類5種、ジュゴン以外の海棲動物(クジラ、イルカ、ラッコなど)は水産庁が水産資源として位置づけているため、環境庁所管の鳥獣保護法の対象からは除外されています。

文化財保護法の内容とその問題点

動物や植物(それらの生息地・生育地を含む)で学術上価値の高いものを「天然記念物」に、とくに重要なものを「特別天然記念物」に指定します。カモシカ、アマミノクロウサギ、コウノトリなどは特別天然記念物に、ニホンザルの下北半島個体群やガン類のヒシクイなどが天然記念物に指定されています。また、野生生物の生息地・生育地として、水原のハクチョウ渡来地(新潟県)などが天然記念物に指定されています。

指定されると地方公共団体の教育委員会が管理・復旧を担当します。しかしその「保護」は、お寺や仏像に対する場合と同じしくみなので、常に変化する自然に対応するには不十分です。しかも法律ができたときの経緯からいっても、野生生物は歴史上、芸術上の価値に着目された有形・無形文化財と比べて重視されていないと言わざるを得ません。

そのため、この法律が野生生物保全のために果たせる役割はごく限られています。

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