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アフリカゾウは増えすぎなのか 小原秀雄JWCS会長がコメント

アフリカゾウの増加に関する報道が続いています。

   ・2008年2月3日 AP通信 「保護措置の成功により、ケニアで野生のゾウが増加」
      JWCSブログ「ワイルドライフ ニュース」に翻訳文掲載  →「ワイルドライフ ニュース」はこちら
   ・2008年2月27日 読売新聞 「ゾウ急増 南アが頭数調整へ 95年8000頭→現在1万8000頭」
   ・2008年2月27日 朝日新聞 夕刊 
      「アフリカ象、増えすぎ? 南アフリカ 間引き   ケニア 引っ越し作戦」
   ・ 2008年3月3日 毎日新聞 「南アフリカ 増えすぎたゾウ、十数年ぶり間引き」 
                                              ほか、テレビニュースなど

 会長の小原は1974年以降、ケニアのツァボ国立公園にほぼ毎年訪れています。2000年からはJWCSはツァボ国立公園のレンジャーにマラリア薬などを寄贈してきました。最近、ケニヤのアフリカゾウが増加しているとの報道がされています。それに関し、次のようにコメントします。

■ゾウの数と象牙取引
1) ケニヤでは1970年代のアフリカゾウの個体数調査では、約15万〜17万頭とされた(ダグラス・ハミルトンによる)。

2) 1980年代の密猟最盛期のケニヤでの生息数は2万3000頭余りといわれた。ツァボ地区でも6000頭以下と推定されていた。その頃は国立公園内でもゾウに出会うと、遠いのにもかかわらず逃げる姿がみられた。

3) 1989年のCITES(ワシントン条約締約国会議)で象牙の国際取引が全面禁止になると、ゾウと出会っても逃げなくなった。

4) ツァボ地区の個体数は調査のたびに増えていった。しかし密猟者に追われたゾウが保護区へ逃げ込んでいるので、自然繁殖によって個体数が回復した数だけではない。

■象牙取引と日本
5) 今回の調査はいろいろな点で正確を期している。個体数の数が細部まで正確かどうかは別として、私の実感でもツァボ地区のゾウは増加している。しかし密猟はなお続いている。

6) ケニヤは南アを中心とした南部アフリカ諸国が提案する象牙取引再開に抵抗している。それに対し再開を望む南部アフリカ諸国の勢力は強い。日本政府はさまざまな形で象牙取引再開に尽力している。

7) 一方で日本政府は、地球温暖化問題などでは国際協力をしながら、野生生物が自然の状態を示すインディケーターだとの視点を欠いている。

■局地的な個体数の増減とは
8) 局地的な増加はよく報道されるが、極めて危険な事例である。これはケニヤのアフリカゾウの件だが、シンバヒルズ国立保護区からツァボイースト国立公園に移送しようとして失敗したと聞く(ケニヤ在住の日本人研究者・中村千秋氏の報告から)。

9) ケニヤ野生生物公社(KWS)・元総裁のオリンド博士によるとツァボ地区の場合、60年代には2万頭余りだった個体数が、一時4万頭近くなり、森林だったところが現在のような長径草本のサバンナになったという。白人のロウズ博士は間引きを進めたが、オリンド博士は断った。その後大干ばつで自然に減少した。また個体数が4万頭になったのは、密猟者に追われたゾウが国立公園に逃げ込んだためだったと見られる。その後、さらに密猟が激しくなり2万頭近くいたクロサイが全滅した。ゾウも減少したが、取引禁止で回復した。

■したがって
 野生生物の個体数が「増加した」と言うとき、広さの単位などと、いつの時点の個体数と比較して「増加した」のかを問わなければならない。人間の利用によって最低の個体数になった野生生物が地域的に「増加した」ことをとらえて「増えすぎたから利用してよい」という結論を導きだすのは「科学的」なことではなく、単なる人間の欲望である。

2008年3月3日    小原秀雄 JWCS会長(談)

参考:イアン&オリア・ダグラス・ハミルトン『象のための闘い』 岩波書店 1995
    小原秀雄『ゾウの歩んできた道』 岩波ジュニア文庫 2002