ビクーニャ

JWCSのめざすもの

野生生物保全論研究会(JWCS)は人間と野生生物が共存する社会の実現を目指します。

経済活動のグローバル化は野生生物に多大な影響を与えています。そしてそれには日本の政策や企業活動および消費行動が少なからずかかわっています。JWCSは日本の非政府・非営利組織として野生生物保全活動を行います。

また活動にあたっては、
1.生態系は人類生存の基盤であることを認識する 
2.安易な人為化を避ける 
3.予防原則*に基づく意思決定を求める 
を基本原則とします。

*予防原則:「深刻な、あるいは不可逆的な被害のおそれがある場合には、完全な科学的確実性の欠如が、環境悪化を防止するための費用対効果の大きい対策を延期する理由として使われてはならない」国連環境開発会議(地球サミット1992)リオ宣言 原則15 (EICネット環境用語集より)

野生の世界は野生のままに

「生物多様性の保全」という言葉が使われだした1990年代の初めから、JWCSの理論研究会は、その概念について議論を重ねてきました。「生物多様性を保全する」といいながら「野生生物保全」にはなっていない保全プロジェクトがあるのではないか――。

「生物多様性」と和訳された英語の「Biodiversity」という言葉には、dis(分離・拡散)vertere(向かう・行く)、つまり進化の結果さまざまな生きものが地球に存在するという意味を含んでいます。しかし、日本では「多様性」という言葉は単に「種類がいろいろある」という意味でとらえられることが多いのではないでしょうか。そのため「生物の歴史の中で、この生きものがこの場所に生きている意味」や「この生きものが未来に向けて進化していく可能性」といった進化、地史を考慮していない保全活動があるように思われます。人間活動によって生物多様性が失われてきたのですから、野生生物の視点に立って考えると生物多様性保全にはまず「野生の世界は野生のままに」、人間による影響をこれ以上広げないことが重要であるとJWCSは考えています。

保存、保護、保全 ― 自然をどんな状態にしたいのか
保存、保護、保全という用語自体は類似概念で、必ずしも厳密な区別はされていない。日本語の語感としては、これらをひっくるめて保護を用いることが多い。

保存 preservation は現状維持を基本とする。 例:「凍結保存」
保護 protection は外敵や破壊から防御して守るという概念。
保全 conservation には二つのニュアンスがある。
①本来の包括的概念で、何も改変しないという選択肢も含めて、目標とする自然の状態に向かって管理するという概念である。目標が現状と同じなら保存と同義となる。目標が目前の脅威を排除することなら保護と同義となる。
② 回復力の範囲内で利用するというもので、一種の資源という発想がある。資源というと、金銭換算される財産と位置付けられてしまう。そこで利権や私物化の問題が起こり、野生生物が自前で生きている自然物という感覚が失われやすい。例えば水生動物の多くを、日本人は水産資源=食い物として認識し、野生動物であるという意識が薄い。

また次のような保全は目標を確認し、対策が適当であるかを検討すべきであろう。
・絶滅に瀕した生物の生活環境を保障することではなく、保全策として移殖(植)をしていないか。
・増えすぎた動物を減らして他の生物や人間への被害を少なくすることが保全として行われ始めた。そこでは、自然を人間の利害や考えの範囲で「管理」することが前提で、保全目標としての野生世界の再現は欠落していないだろうか。
・守るために必要な財源を入山料などの利用に求めると、過剰利用を促進するのではないか。
・枯れた植物体を整理排除する手入れを清掃という意識だけで行うことは、自然にとっては保護でも保全でもなく、人間の美的満足でしかない。
・雑木林の下草刈り・落ち葉掻きは、若い植栽木と競合する植物を排除したり、たい肥や温床造りの資材とするなど、もともと農林業行為であった。農林業的利用がほとんどなくなり、下草刈りをしないで放置すると、関東地方の場合、ササの繁茂か常緑広葉樹の増加が起きる。そうなると、それまで下草として生育していた植物が光不足で枯れてしまう。この場合の保全目標は、下草が生育し続けられる環境づくりになる。ここで放置して常緑広葉樹林に変わっていくことは、二次遷移という自然界の原理であり、本来排除されるべき現象ではない。目標が雑木林の下草の存続だから選択しないのであって、目標をその地域の自然植生に置くのであれば、落葉樹林という特定の遷移段階でとどめておくのはむしろ破壊行為に相当する。この目標設定が合意されないまま、下草刈りだけが自然保護だと言うのは適切ではない。

小川潔 (2017) 保存、保護、保全―自然をどんな状態にしたいのか 「生物多様性保全と持続可能な消費・生産」JWCS pp84-86 より抜粋・要約

JWCSの事業

(1)研究会の運営

その時々の問題や保全論の背景となると思われる科学、哲学、思想などを検討する会として理論研究会を立ち上げました。公開理論研究会を年1回(6月)に開催しています。

(2)野生生物保全プロジェクトの実施

①調査・提言
ワシントン条約、生物多様性条約、種の保存などに関して、その時々に必要とされる研究提言を行っています。

②生息地における野生生物保全活動に対する支援
2011年8月30日~2017年3月31日までJXエネルギー株式会社よりゴリラのキャラクターにちなみ、ご寄付をいただきました。この寄付金はアフリカのゴリラ生息地で活動するポレポレ基金とWCSコンゴに活動費として送金しました。

③普及啓発
約400名の翻訳ボランティアの方々の協力を得て、世界の野生生物保全に関するニュースなどを翻訳し、ワイルドライフニュースで情報を発信しています。またセミナーの開催やイベントでの出展、講師派遣を行っています。また、メールマガジン(無料)を月1回発行しています。

④国際会議参画
ワシントン条約(CITES)や国際自然保護連合世界自然保護会議(WCC)などの国際会議に参加し、国内外に情報発信を行っています。また国際自然保護連合(IUCN)や種の保存ネットワーク(SSN)など国際団体のメンバーとして情報収集と発信を行っています。

(3)会報発行
年3回(7月、12月、3月)に会報『JWCS通信』を発行しています。会報には野生生物保全をめぐる世界の動向と当会の活動の報告を掲載しています。

パートナー

IUCN Member    SSN   消費から持続可能な社会を作る市民ネットワーク

the Little Fireface Project   jcnundb.org  JTEF