
野生生物の保全には多様なアプローチがあることを学ぶ
野生生物が減少する理由には、森林伐採や過剰漁業、狩猟といった直接野生生物を利用すること、農地開発や海岸の埋め立てのように生息地がなくなること、外来生物の侵入や地球温暖化、汚染などによって生息に適さない環境になってしまうことがあります。
こられの問題から野生生物を保全するには、動植物の研究だけでなく、法律を作って守らせ、汚職や暴力を取り締まったり、経済活動に規制を設けたり、過剰な野生生物の利用や違法行為をせずに済むように貧困・飢餓対策、福祉・教育の充実を行ったり、これらの活動の推進に重要な人権やジェンダー平等の確立など、多様なアプローチが必要です。
個人の生活の身近なところでも、購入した商品の生産が外国の野生生物の減少に加担していたり、住んでいる地域が野生生物の生息しにくい場所になっていったりしています。
ワイルドライフ カレッジでは1年間のカリキュラムを通じて、野生生物を保全するためには多様なアプローチが必要であることを学び、受講生ひとりひとりの関心や得意なことから野生生物保全活動を始めることができるよう、後押しします。
年間カリキュラム
■前期ウェビナー(Zoomミーティング形式)
生物多様性とは何か、自然の保護と利用とは、市民活動とは、など野生生物保全活動の基礎を学びます。
■フィールドワーク(現地集合・解散)
野生生物保全の現場を訪ねて、前期ウェビナーで学んだことを現実の活動と関連付けます。前期ウェビナー全4回の受講が参加条件です。
■後期ウェビナー(Zoomミーティング形式)
国内外の野生生物保全活動や研究から野生生物保全のための多様なアプローチを学びます。
■実践ゼミ(メール・Zoomによるグループ会議または個別指導)
受講生ひとりひとりが関心のあるテーマでレポートを書いてJWCSのブログに掲載したり、ポッドキャストのラジオ番組を制作したり、イベントを開催したりなど、JWCSの事業の中で、活動の第一歩を踏み出します。前期・後期ウェビナー全8回の受講が参加要件です。
■ワイルドライフ・ギャザリング(現地集合・解散)
午前中は自然観察会、午後は受講生同士が顔を合わせ、実践ゼミの成果を発表し、今後の活動を話し合う、実践ゼミ発表会を開催します。
2023年度プログラム
ワイルドライフカレッジ2023 受講生募集要項(全5ページ)
前期ウェビナー(終了しました)
受講料:各回1,000円 学生無料
申込締切:7月31日20:00(リアルタイムでの開催終了後のお申し込みの場合は録画のURLをメールでお知らせします)
第1回「美談」とされる保全活動を考える~生物多様性の定義から~
/冒頭:ワイルドライフカレッジ2023の目指すもの
2023年6月7日(水)20:00-21:30 (リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
講師:小川 潔(JWCS:代表理事・学芸大学名誉教授)
内容:イントロダクションとして当会事務局長の鈴木よりワイルドライフカレッジ2023 の目指すものについてお話をします。続いて当会代表理事の小川とともに生物多様性保全において「良い」とされている活動について、生態学的視点から誤解や問題がないか考えていきたいと思います。
目指す姿:世間で「良い」とされている保全活動を生態学的に考える力を養います。
#生物多様性、#タンポポ、#サンゴ、#アメリカザリガニ、#ホタル、#外来種と在来種
第2回 市民による生物多様性保全 ~市民モニタリングとは~
2023年6月14日(水)20:00-21:30 (リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
講師:木村 進(公益社団法人 大阪自然環境保全協会 理事)
内容:「市民活動は持続可能でない」と言われることがあります。しかし実は日本にも 1970 年代から、およそ半世紀にわたって市民による生物多様性モニタリングを続けているプロジェクトがあるのです。市民モニタリングの意義、市民活動継続の秘訣、そしてその結果わかってきた成果について学びます。
目指す姿:市民でも参加できるモニタリング調査が保全につながることを知ります。
#市民モニタリング、#タンポポ調査、#外来種と在来種
第3回 環境アセスメントを考える ~開発事業・計画に市民の意見を反映させるには?~
2023年6月21日(水)20:00-21:30 (リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
講師:遠井朗子(酪農学園大学 教授)
内容:開発事業・計画において生物多様性の保全を実現する法的手段として、環境影響評価(環境アセスメント)への関心が高まっています。生物多様性を保全するアセスメントとは?市民の参加はなぜ重要なのか?環境アセスメントを、より開かれた、多様な価値の実現を目指す制度として捉え直すための視点を示します。
目指す姿:多様な価値観が存在することを理解し、その共存の道を考えます。
#環境アセスメント、#市民参加、#異なる価値観の共存
第4回 市民活動座談会 ~ブレイクスルーの鍵はどこ?~
2023年6月28日(水)20:00-21:30 (リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
登壇者: 志村智子(公益財団法人 日本自然保護協会 事務局長)、つる詳子(自然観察くまもと)、小川 潔(JWCS代表理事・学芸大学名誉教授)
内容:「市民参加の重要性」が叫ばれて久しい今日ですが、今の日本の生物多様性政策は、市民の声が反映された政策であると言えるでしょうか。もしそうでないとするなら、なにがボトルネックになっているのでしょうか。ローカルからグローバルまで、成功例から失敗例まで、市民活動の歴史を知る経験豊富な講師とともに課題を整理しながら「市民活動」のブレイクスルーにつながる鍵を探ります。
目指す姿:これまでの市民活動から得た学びを、未来に活かす方法を考えます。
#市民活動、#good practice、#生物多様性国家戦略、#パブリックコメント
フィールドワーク -野生生物との付き合い方を考える-(終了しました)
2023年8月5日(土)~6日(日)
【参 加 費】受講料無料 宿泊費食費実費負担 現地集合・解散(学生には交通費補助あり)
【参加条件】前期ウェビナー全4回受講 定員15名
【申込】受付開始 6月28日 申込者多数の場合は書類選考
講師:瀧井暁子ほかNPO法人信州ツキノワグマ研究会メンバー
前期ウェビナーでは市民活動の視点から生物多様性保全の基礎について考え、学んできました。それでは実際に市民による保全活動が実施されているフィールドへ足を運んでみましょう!
2,953 頭* − この数字が何を意味するかわかりますか?2022 年度に全国で捕殺されたツキノワグマの頭数です。そのうち 6番目に多い177 頭*が長野県で捕殺されました。
そんな長野県でツキノワグマと人との共存を目指して活動を続けている団体の一つが、NPO法人 信州ツキノワグマ研究会です。長野県では、生息地である森林の
変化とともに、ツキノワグマの生息範囲や利用場所も変化して人との軋轢が増えています。クマの生態を調査することで、「捕殺だけではクマの被害は減らない」と
いうことが明らかになってきているそうです。同会のフィールドの一つである長野県伊那市などを訪問して、ツキノワグマの追跡調査や調査から導き出された共存のための対策について学びます。普段は見ることができない保全活動の現場を見せていただくことができる大変貴重な機会です!
(詳細は第4回のウェビナーでお話致します。)
#クマ、#獣害、#野生生物との共生
後期ウェビナー
受講料:各回1,000円 学生無料
Peatixより受講したい回を選択してお申し込みください。 https://jwcs.peatix.com/
申込締切:11月30日20:00(リアルタイムでの開催終了後のお申し込みの場合は録画のURLをメールでお知らせします)
★全4回受講申し込み(推奨) https://peatix.com/event/3688705
受講申し込みと同時に入会・ご寄付も募集しています。JWCSの運営は寄付・会費が支えています。活動の継続のためにご協力をお願いします。
★学生専用申し込みフォーム https://forms.gle/hehMj3tpoDXZiFBL6
(この申し込みで前期全4回受講できます)
第5回「マルチセクターで取り組むオオサンショウウオの保全 」
2023年10月4日(水)20:00-21:30 (リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
講師:田口 勇輝(日本オオサンショウウオの会)
内容:国の特別天然記念物に指定されているオオサンショウウオ。その調査・研究、飼育(!)、保全などに関わる多様なアクターが集う団体があります。子供まで楽しめる普及啓発、開発業者と連携しながら取り組む保全対策など、長年の経験から編み出された活動のアイディアを、オオサンショウウオの魅力的な生態や文化、最新の調査結果とともにお話頂きます。
#オオサンショウウオ、#天然記念物、#動物園、#研究と実践、#行政
▶第5回受講申込 https://peatix.com/event/3688742
第6回「小笠原諸島の固有種アカガシラカラスバトをノネコから守る」
2023年10月11日(水)20:00-21:30 (リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
講師:佐々木 哲朗(NPO 法人 小笠原自然文化研究所 副理事長)
内容:「ネコをきちんと家の中で飼う」、それだけでも地域の野生生物保全に貢献できるのです。東京から南に約 1000km の太平洋上に浮かぶ小笠原諸島では、飼い猫が野生化して、小笠原の固有種であり絶滅危惧種のアカガシラカラスバトなどの鳥類を食べてしまうという被害が発生しています。父島では2005 年より NPO、獣医師会、行政、企業が協働でノネコの捕獲・管理を始めたところ、全島的にノネコは低密度化し、アカガシラカラスバトなどの鳥類数に回復傾向が見られるようになりました。
#世界遺産、#絶滅危惧 IA 類、#アカガシラカラスバト、#ネコ
▶第6回受講申込 https://peatix.com/event/3688799
第7回「市民運動としてのフェアトレード~生産地の生物多様性を守る~ 」
2023年10月25日(水)20:00-21:30(リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
講師:小吹 岳志(フェアトレード・サマサマ 事務局長/日本フェアトレード・フォーラム 監事/世界フェアトレードタウン運動日本 コーディネーター)
内容:「フェアトレード」あるいは「エシカル〇〇」という言葉を聞いたことがある人、あるいはそういった商品を購入したことがある人も多いと思います。フェアトレードは「消費者教育」であると同時に「世界を良くする運動」でもあります。市民運動としてのフェアトレードとは?森や海の生物多様性保全につながる消費行動とは?そして国内で広がるフェアトレードタウン運動についてもご紹介します。
#フェアトレード、#エシカル消費、#フェアトレードタウン
▶第7回受講申込 https://peatix.com/event/3688828
第8回「アフリカゾウと地域住民との共存を目指して 」
2023年11月8日(水)20:00-21:30(リアルタイム参加者は録画をしない「放課後」にて講師と雑談出来ます。21:40まで)
講師:中村千秋(NPO 法人 サラマンドフの会 代表)
内容:アフリカゾウなどの野生生物は、畑を荒らしたり、時には人と遭遇したりと、地域によっては深刻な軋轢を生みだしています。そんなケニアで村の子供たちへの環境教育や女性たちへの生計向上支援を行いながら、地域住民とともに野生生物保全に取り組む日本のNPOがあります。
#アフリカ、#ゾウ、#コミュニティ支援、#環境教育、#野生生物との共存
▶第8回受講申込 https://peatix.com/event/3688877
ワイルドライフカレッジ2022記録
・ワイルドライフ カレッジ2022 募集要項
・ワイルドライフ カレッジ2022 フィールドワークのご案内
・ワイルドライフカレッジ2022実践ゼミ 募集要項
・「ワイルドライフカレッジ 2022を振り返る」『JWCS通信』No.98
ワイルドライフカレッジ2022 参考図書・講師の著書
『生きもの目線で活動チェック』野生生物保全論研究会(2019)\0 送料着払い(お申込みはこちら)
『シリーズ日本列島の三万五千年−人と自然の環境史第1巻 環境史とは何か 』湯本貴和 編/松田裕之・矢原徹一 責任編集(2011)文一総合出版 ¥4,400
『みんなの幸せってどんな世界 共存学のすすめ』古沢広祐 著(2018)ほんの木 ¥1,540
『ホエールウォッチングをめぐる今日的考察』水口博也 著(2022) Amazon kindle(電子書籍)\300
ワイルドライフカレッジ2022・2023は独立行政法人環境再生保全機構地球環境基金の助成を受けて開催しています。