国内象牙市場閉鎖

密猟や違法取引に寄与する国内象牙市場を閉鎖することが、2016年に開催されたワシントン条約第17回締約国会議で決議されました。
しかし、日本では象牙製品の売買が続いています。
なぜ日本の象牙市場の閉鎖が求められているのでしょうか。世界の声を動画にしました。

象牙をめぐる動き

 ゾウの乱獲が問題になり、ワシントン条約でアジアゾウ、アフリカゾウ(サバンナゾウとマルミミゾウ)とも国際取引の原則禁止が決まったのが1989年です。その後日本は条約の決定に基づく「1回限りの象牙取引(ワンオフセール)」により、2度にわたり象牙を輸入しました。
 2度目のワンオフセールが決定した後、アフリカで密猟が急増しました。象牙の違法取引が武装勢力の資金源となり、村が襲われ、住民やレンジャーが虐殺されました。そして野生生物の密猟・違法取引は国際問題であるという認識が広がり、犯罪を断つために象牙は国際取引だけでなく、国内取引も禁止すべきという声が広がっていきました。

 1964年から2016年にかけて、マルミミゾウ(シンリンゾウ)の個体数は平均90%減少し、サバンナゾウの個体数は平均70%減少したとの研究結果があります。

 2016年9月の国際自然保護連合(IUCN)の総会に相当する世界自然保護会議で、象牙国内市場閉鎖の動議が採択され、その2週間後に開催されたワシントン条約締約国会議での決議につながっていきます。
 国内に象牙市場がある国は、狭い例外を除いた取引を禁止する法律を制定しました。そして中国は2017年末で国内製造・取引を禁止し、その後密猟は減少しました。

 日本では2020年にオリンピック・パラリンピックのため来日した外国人旅行客が、日本で象牙を買って国外に持ち出すことを懸念し、東京都が「象牙取引規制に関する有識者会議」を開催しました。
 有識者会議は2022年3月に、東京都から国へ全国的な対策をとるようの働きかけすることや、条例による取引規制の検討も含めた提言をまとめました。

 日本国内にある象牙は251t2024年2月28日時点で報告されたの世界の象牙在庫の37%にあたります。日本の象牙市場と在庫がゾウの密猟を再び激化させる引き金にならないよう、世界は注視しています。

1973年 ・「絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約(ワシントン条約、CITES)」ワシントンD.Cで採択(3月3日)。
1975年 ・ワシントン条約発効(7月1日)。アジアゾウは附属書Ⅰ、アフリカゾウは附属書Ⅱ。
1980年 ・日本がワシントン条約に批准(11月4日)。新たな立法処置をせず、既存の外為法に基づく輸出入規制で対応。
1987年 ・国内初のワシントン条約に対応する法律「絶滅のおそれのある野生動植物の譲渡等に関する法律」施行(12月1日)。国内での譲渡を対象。
1989年 ・ワシントン条約第7回締約国会議 アフリカゾウが附属書ⅡからⅠに格上げされる(国際取引原則禁止)。
1993年 ・「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」施行(4月1日)。
1999年 ・ワシントン条約の決定に基づく「1回限りの象牙取引(ワンオフセール)」として南アフリカ、ナミビア、ボツワナから日本へ象牙50トンが輸出される。
2006年 ・大阪南港で象牙3トンの密輸が発覚。
2008年 ・2度目の「1回限りの象牙取引」として南アフリカ、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエから日本と中国へ象牙が輸出される。日本へは60トン。
   南部アフリカ諸国による報告(和訳)新規タブまたはウインドウで開きます
2013年 ・国連安全保障理事会にアフリカの武装勢力が象牙を資金源としていると報告される。
   CITESのニュース(英語)新規タブまたはウインドウで開きます
2015年 ・タイ アフリカゾウ象牙の所持・取引禁止。アジアゾウ象牙は所有象牙を全登録。
・米中首脳会談において、中国の習近平国家主席とアメリカのオバマ大統領が、象牙の国内取引を終了するための共同声明を発表(9月25日)。
2016年 ・米国 州間の象牙商業取引禁止(7月)。州内取引禁止は州により異なる。
・グレート エレファント センサス(セスナ機を使ったサバンナゾウの個体数調査)、 2007~ 2014年で30%減少と発表。
  Great Elephant Census (英語)新規タブまたはウインドウで開きます
・IUCN世界自然保護会議の動議で、象牙国内市場閉鎖が採択される。
   IUCNの象牙国内市場閉鎖に関する決議文(英語)新規タブまたはウインドウで開きます
・ワシントン条約第17回締約国会議で象牙国内市場閉鎖が採択される(決議10.10 3)。
   CITESの決議10.10に関するCoP18改訂版の決議文(英語)新規タブまたはウインドウで開きます
・英国 1947年以降に生産されたすべての象牙の販売は禁止。
・株式会社ハンコヤドットコムが象牙製品の販売を終了。
2017年 ・楽天株式会社、イオン株式会社、株式会社メルカリが象牙製品の販売中止を表明。
2018年 ・中国 象牙国内製造・取引完全停止(1月1日)。
・香港 象牙取引禁止法成立(2022年1月1日から取引禁止)。
・英国 象牙取引禁止法成立。
・イトーヨーカ堂が象牙製品の販売中止を表明。
2019年 ・ヤフー株式会社が象牙製品の販売中止を表明。
2020年

・台湾 象牙取引停止(1月)。
・東京都象牙取引規制に関する有識者会議を開催 第1回(1月28日)、第2回(12月10日)、第3回(12月23日)象牙取引規制に関する有識者会議ウェブサイト(日本語)新規タブまたはウインドウで開きます

 東京都 政策企画局 政策調整部政策調整課『象牙市場の実態調査 報告書』公表新規タブまたはウインドウで開きます

2021年 ・東京都象牙取引規制に関する有識者会議を開催 第4回(3月29日)
・EU 狭い例外を除き象牙取引禁止
2022年 ・東京都『象牙取引規制に関する有識者会議報告書新規タブまたはウインドウで開きます公開。国に対し象牙取引管理の一層の厳格化を求めている。
2024年 ・国連薬物犯罪事務所『2024World Wildlife Crime Report』(英語)新規タブまたはウインドウで開きますで、おもな象牙消費国の市場閉鎖が真の象牙の需要低下につながったと評価
2025年 ・条約事務局の「ゾウ取引情報システム(ETIS)」のウェブサイト(英語)新規タブまたはウインドウで開きますで国別の象牙押収データが公表され、日本が違法取引に関与していたことが明らかに