Oceanic white-tip shark

絶滅のおそれのあるサメとワシントン条約

ワシントン条約(絶滅のおそれのある野生動植物種の国際取引に関する条約、CITES)では、条約の対象となる種を、附属書にリストアップしています。その中にはサメも含まれますが、日本は「絶滅のおそれがあるとの科学的情報が不足していること、地域漁業管理機関が適切に管理すべきこと等から留保を付した」としています。留保とは条約の手続きを経て、指定した種の取引に関しては締約国ではないと扱われます。
ワシントン条約に掲載されたサメは、「絶滅のおそれがあるとの科学的情報が不足」しているのか、「地域漁業管理機関が適切に管理」できているのか、また現在の漁業は持続可能なのか。これらの疑問に答えるため、当会は2019年9月に海外から専門家を招聘し、シンポジウムを開催しました。

参考:外務省 「ワシントン条約」のサイト 5(3)我が国の留保新規タブまたはウインドウで開きます

 

シンポジウム「サメの世界を知る―絶滅のおそれのあるサメ」概要

講演1「魚の物語:サメ、漁業、そして未来」

▪リマ・ジャバドさん RIMA W. JABADO, PhD
水産科学者・保全活動家であり、その経験は西部インド洋から最近は西アフリカにも及ぶ。サメ・エイ漁業とその取引の調査・研究から、フィールドワークの結果を政府・コミュニティーレベルでの保全政策提言・実施につなげている。とくに漁業活動、混獲等の人間と野生生物の軋轢、および絶滅の危機にある種の保全、また海洋産物取引の社会経済面に関心を持つ。50以上の科学文献、レポート、書籍の著者・共著者であり、彼女のサメ・エイの仕事はナショナルジオグラフィック、BBC、といったメディアにも取り上げられている。
IUCNサメ専門家グループのインド洋地域副議長、IUCN海洋保全委員、移動性野生動物種の保全に関する条約(ボン条約)諮問委員会回遊ザメ保全に関する覚書のアジア地域代表も務める。サメ・エイに関する功績から数々の助成金や賞を得ており、2019年にはスリランカ、インド、セネガル、モーリタニアのシノノメサカタザメとトンガリサカタザメ調査のためピュー海洋保全フェローシップ(アメリカの民間助成)を受賞した。
創設者でありチーフ・サイエンティストを務めるエラズモ・プロジェクトは、ドバイをベースにアラビア海域における軟骨魚類(サメ類、エイ類)の調査を通して普及教育活動を行っている。

注)IUCNレッドリストのカテゴリーの和訳について、講演のスライドと字幕が異なります。詳しくはこちらのサイトをご参照ください。

 

講演2「香港でのフカヒレ取引と規制、フカヒレ識別による法執行」

▪スタン・シアさん STAN SHEA
海洋生物学者、ダイバー、教育者。修士取得後2009年からNGO、ブルーム・アソシエーション香港に勤務。 海洋プログラム責任者として、サンゴ礁に生息する食用魚の取引、乾燥水産食品取引、海洋生物多様性について知られていない問題を明らかにし、海洋資源と生息地の保全のために重要な情報を提供する研究プロジェクトを展開している。
2014年には「東経114度香港サンゴ礁に住む魚調査プロジェクト」発足者の一人として、ダイビングにより香港海域のサンゴ礁に住む魚の種の調査を行っている。そのデータはWWF香港の海洋生態ホットスポットマップ、香港政府のサンゴ礁に住む魚のガイドブック等、数々のプロジェクトに使用されている。また2017年からは香港海洋生物リストの海洋魚種編者の一人となる。
彼は保全問題をさまざまな立場の人たちにとって身近なものにすることに努めている。企業、政府職員、園児から大学生までを含む参加者に海洋保全問題を教える彼のトレーニング・ワークショップは、今日まで世界20か国・地域以上の1万人を超える人々に行われてきた。
「多くの場合、人間は『問題の一部』だが、 『解決の一部』になることを選べる。自然を大切にすれば、自然が人間を大切にしてくれると信じている」。

 

講演3「CoP18でのサメ・エイ・海産種の議論」

▪真田康弘さん真田さん写真
早稲田大学 地域・地域間研究機構 アメリカ研究ユニット, グローバル・ガバナンス研究所, 客員主任研究員(研究院客員准教授)、共著『クジラコンプレックス:捕鯨裁判の勝者はだれか』(東京書籍 2015)
「真田康弘の地球環境・海洋・漁業問題ブログ」
講演パワーポイント https://y-sanada.blog.ss-blog.jp/2019-09-13 会議報告 https://y-sanada.blog.ss-blog.jp/2019-08-30

Q&A パネルディスカッション

リマ・ジャバドさんへの質問と回答
・日本政府は科学的証拠に基づく掲載を主張、ワシントン条約附属書掲載による効果に懐疑的。このような懐疑的反対者には科学者としてどう反論しますか?
・水揚げされたサメは何歳のもの、また成熟していないor しているものが多いのでしょうか?
・世界的なサメ、エイの混獲を防止する対策や規制は?
・サメ・エイ類と漁業との関係のゴールは?

スタン・シアさんへの質問と回答PDF
・人々の環境の配慮からフカヒレを食べなくなったということが素晴らしいと思いました。フカヒレの関係業者にはどのように理解を得たのでしょうか
・例えばウナギでは「いつか食べられなくなる」というのが一部で需要を刺激している面もあるように感じられます。普及啓発ではどのような点に気を付けたらよいでしょうか?
・他の魚でも絶滅危機はある気もしますが、なぜとくにサメの緊急度は高いのでしょうか…ほか

真田康弘さんへの質問と回答
・CITESが政治的ネゴの応酬になってることについて
・日本政府(日本人)はどうして保護しようとの考えに至らないのか
・中国のクジラに対する意見は

マスメディアの報道

▪みなと新聞 2019年10月1日
「サメ資源保護重要性訴え 都内でシンポ IUCNのリマ・ジャバドさん」

▪マリンダイビング11月号
「サメ専門家たちによる サメ・シンポジウム開催」
「知っているようで知らないサメの魅力 アオザメが減ってるって本当? ワシントン条約で新たに決まったこと

 

 

This project was funded by the Shark Conservation Fund, a philanthropic collaborative pooling expertise and resources to meet the threats facing the world’s sharks and rays. The Shark Conservation Fund is a project of Rockefeller Philanthropy Advisors.