象牙を使わない箏コンサート~箏曲の地平線を望む夕べ

新素材の箏爪での演奏の初披露と箏とアフリカ打楽器のコラボで世界とつながる音楽を体験するコンサート
かつてはアフリカ大陸に広く生息していたゾウは、象牙の需要により1964年から2016年の間にサバンナゾウは70%、マルミミゾウは90%も減少しました。ゾウを絶滅から守るため、ワシントン条約では象牙国内市場閉鎖の勧告が決議されました。
世界のおもな象牙消費国では、国内での象牙の売買を狭い例外を除き禁止しています。この象牙国内市場閉鎖は象牙の価格を下落させ、ゾウの密猟や違法な象牙の押収の減少に寄与したと国連機関の報告書は述べています。そして日本がかかわる国際違法取引があったことが明らかになり、日本の国内市場閉鎖が求められています。(象牙取引について詳しくは)
邦楽器には象牙が使われていますが、文部科学省は代替品の開発に補助金を支出しており、象牙をめぐる状況は大きく変わりました。
今回のコンサートは象牙代替品での演奏の音色を体験し、ゾウの保護と伝統芸術の両立を考えます。
象牙を使わない箏コンサート ~箏曲の地平線を望む夕べ
主催 認定NPO法人野生生物保全論研究会(JWCS)
共催 認定NPO法人トラ・ゾウ保護基金/Sera Creations
後援 公益社団法人日本動物園水族館協会/国際自然保護連合(IUCN)日本委員会/認定NPO法人アフリカゾウの涙
日時 2025年10月31日(金)18:30-19:45(17:00開場)
会場 東京ウィメンズプラザ ホール(東京都渋谷区神宮前5-53-67)
コンサート申込
チケット 一人1,500円(親子室チケットは小学生以下無料)
【チケット販売サイトPeatixから】
https://ivoryfreeconcert2025.peatix.com
領収書はPeatixのシステムからダウンロードできます。
【郵便振替用紙でチケット代を振り込む】
① 郵便局に備え付けの郵便振替用紙に以下をご記入ください
郵便振替口座番号 00160-9-715145 加入者名 野生生物保全論研究会
通信欄に「コンサート」
② 領収書はATM利用明細票や窓口の払込票兼受領証をもって代えさせていただきます。送金の締め切りは10月29日です
コンサート当日、受付でお申込みのお名前を伺います。会場への先着順で座席カードをお渡しします。
※ご不明な点はこちらのお問い合わせフォームにご連絡ください。
【プログラム】
17:00 開場
イベント開始までホールでは、野生生物保全論研究会が発信しているポッドキャストを使った音声番組「生きもの地球ツアー」をお楽しみいただけます。受付周辺では野生生物保全論研究会と共催団体のトラ・ゾウ保護基金の活動紹介、また象牙代替素材を使用した和楽器アイテムの展示を行います。
18:30 開会あいさつ
18:35 講演
19:05 演奏
19:40 閉会あいさつ
19:45 終了
【講演】
「ゾウの密猟と日本の象牙市場」 認定NPO法人トラ・ゾウ保基金 坂元雅行
「アフリカのゾウを守る象牙代替への挑戦~再生可能資源から作る新素材nanoforest~」 中越パルプ工業株式会社開発部 橋場洋美
【演奏曲】
古典箏曲・現代箏曲
箏とジェンベのコラボレーション
箏の演奏には象牙代替として開発された、竹由来の新素材箏爪と植物原料配合樹脂の箏柱を使用します。
【演奏者】
マクイーン時田深山(マクイーン ときた みやま)
地球の住民として色々考え直さないといけない状況になっています。
人類や環境だけでなく、文化や伝統の存続と発展に向けて、象牙に代わる、地球に優しい素材の開発を進めることが不可欠だと感じています。
これまで何世紀にもわたり使わせてもらった象牙への感謝の気持ちを忘れず、今あるものは大事に使い、邦楽をはじめ伝統芸能の未来を守るために、皆で力を合わせて前進できることを願っています。

マクイーン時田 深山
(プロフィール)
即興、現代音楽、オリジナル曲を中心に活動。オーストラリア出身。伝統に基づきながら現代人が面白い、聴きたいと思える独自の音楽を目指す。ソロに加え様々な編成で活動し、自然体で豊かな表現が定評を得ている。東京ジャズフェスティバル、ドイツのMoers Festival等に出演し、バンクーバー交響楽団、Australian Art Orchestra、日本フィルハーモニー交響楽団等と共演。2019年にAsian Cultural CouncilのグランティとしてNYに滞在し、現代音楽、実験音楽、即興音楽に携わる。2020年に欧、米、豪、日本の作曲家の作品を収録したソロアルバムをリリース。小田村さつき、沢井一恵に師事。
Abdou Bayefall (アブドゥ バイファル)
(プロフィール)
セネガル共和国出身、西アフリカ伝統舞踊のプロフェッショナル・ダンサー。

アブドゥ バイファル
17歳で名門舞踊団「Ballet Senomew」の最年少団員として初の国際舞台を踏み、「Fils du ballet」(バレエの申し子)の愛称をもらう。またモロッコでBaaba maal (セネガルの国民的歌手)の目にとまり、ツアーダンサーに加わる。その後スペイン「Ballet la frica 2000」に移籍。公演ではダンス、チヤカバ、ドラムと一人で3役をこなし、ダンスの指導を行い、2年間活躍する。セネガルに帰国後は、「Ballet la linguere」セネガル国立舞踊団に入団し、3年間ダンサー、コレオグラファーとして活躍する。セネガル政府より、・Djembe Dance(ジェンベ ダンス)・Sabar Dance(サバール ダンス)・Sorouba Dance (ソロウバ ダンス)・Tiakaba (チャカバ:竹馬を用いて1本足で踊るダンス)・Coumpo Dance (コンポー ダンス:ジョラ族のダンス)の5種類のダンスに関する、ダンス指導者として国際免許状を授かる。2002年のワールドカップ公演のため来日。その後日本を拠点としダンサー、ドラマーとして世界各地にてダンスワークショップ・演奏活動を行う。セネガルの伝統舞踊をこれからの若い世代に伝えていく貴重なダンサーの1人である。
※ジェンベ奏者がアブドゥさんに変更になりました
邦楽界にも象牙代替品支持の声
邦楽の演奏者の中にも、ゾウの密猟と絶滅の問題に真摯に向き合う方がいます。今回のコンサートに向けてメッセージを寄せてくださいました。
箏奏者・作曲家 明日佳
お箏の演奏には、永い歴史の中で音色を探究した結果として、道具として象牙が使われてきました。 しかし、これからの未来は、もう生産すべきではないと思っています。今すでにある象牙は大切に使いつつも、サスティナブルなお箏の世界を作るためには、プラスチックでも象牙でもない製品を考えていく必要を感じています。

明日佳
【明日佳(あすか)】
若手屈指の超絶技巧主と称賛され、邦楽・古典に確固たる礎を持ちながらも、既成概念に囚われないオリジナリティ溢れる活動を展開している。世界中の様々な音楽シーンで活躍するアーティストやパフォーマー達とのコラボを積極的に行なう新進気鋭の箏奏者・作曲家。
琵琶演奏家 水島結子
琵琶の音色は長く象牙と共に響いてきましたが、素材の背景に目を向けることも今に生きる演奏家の大事な役割だと感じています。古き良きものを大切にしながらも時代に合わせた新しい素材や演奏者の在り方にも意識を開いていくことで、音と共に未来への対話が始まると信じています。
【水島結子(みずしまゆいこ)】

水島結子
琵琶演奏家/『琵琶新聞』研究家
友吉鶴心に師事。演奏のみならず、日本で初めて『琵琶新聞』の研究を始め、科学研究費助成事業基盤研究Cにて「近代琵琶楽の成立と展開」を論文発表。2017年『東久邇宮文化褒賞』受賞。
演奏活動を中心に若手琵琶奏者育成、近代琵琶の研究・論文発表、大学講義、琵琶製作者育成や楽器代替素材の研究と多岐にわたり琵琶音楽の発展に勤める。
箏演奏者 北川聡栄
箏は今では世界各国で愛されている楽器となっています。この日本の素晴らしい楽器をこれからも多くの方々に弾いて頂くには、箏爪の素材である象牙に頼らない未来が必要だと強く思います。伝統、技術、テクノロジーから生まれる、和楽器の新たな素材に期待しています。
【北川聡栄 (きたがわ あきはる) 】
イギリスを中心にヨーロッパで箏の演奏やアウトリーチに努める。箏×シンセサイザーデュオ、Kodamaのメンバー。箏曲講師。
新素材による高品質和楽器アイテムの開発
象牙と同等の代替素材はないと考えられていた和楽器アイテムでも、新素材を使った製品が開発されました。このたび竹由来のセルロースナノファイバー(CNF)を使用した象牙の聴感に迫る箏爪が完成したため、植物原料配合樹脂製の箏柱とともに、その音色を確かめていただくのがこの「象牙を使わない箏コンサート」です。ご参加お待ちしています。
Sera Creations 眞田典子
(象牙代替素材を使った和楽器アイテムを制作・販売)
私が箏を習い始めた当時は当たり前だった先生の言葉「象牙の箏爪を買うように」に対して、「象牙は誰にでも必要なのだろうか?」と違和感を覚えたことが、和楽器アイテムに使われる象牙代替素材の開発を始めたきっかけでした。
今なお、象牙は自然死したゾウの牙のみを使っていると誤解し、残虐な密猟が行われてゾウが絶滅の危機に瀕していることなど全く知らない人はまだ多いように思います。正確な情報が行き渡っていないのです。
現在、邦楽器の象牙代替としてはプラスチック製品が多く使われていますが、残念ながらプラスチックは環境負荷が問題になっています。単に象牙を使わないというだけではなく、環境面への配慮も必要だと感じていた折、幸いにも竹由来のセルロースナノファイバー(CNF)に出会いました。それから8年の長きにわたって中越パルプ工業様のCNF成形体制作の試行錯誤、新潟大学工学部機械システム工学プログラム坂本研究室様の音響および演奏者の聴感の素材による違いの研究*、箏奏者の方々の既成概念に捉われないご協力に支えられて共に開発を進め、今回のコンサートで新製品の音色を皆様に披露する運びとなりました。
和楽器の「和」には、和らげる・調和する・平和などの意味があるそうです。
その和楽器によってゾウを絶滅の淵に追いやったり、象牙の取引をめぐってアフリカの人々に分断を生んだりしてはならないと思います。
ゾウを守り、伝統を繋げ、象牙に頼らない生活の糧を創っていく。「象牙の国内市場閉鎖」はそのための一つの扉に過ぎず、その扉を開けた先にある景色を皆で共有できれば、これほど素晴らしいことはありません。
(*)Shuichi SAKAMOTO, Shunsuke WATANABE, Taku WATANABE, Yuki SATO, Shuma
ITO, Study of Ivory Alternatives for Koto Bridges: Correlation between Sensory Evaluation and Amplitude Modulation of Fundamental Spectrum, Proceedings of 23rd International Congress on Acoustics (ICA2019), Aachen, Germany, 9-13th September 2019, Paper No. 658, 8 pages. DOI:10.18154/RWTH-CONV-239334