NHK「所さん!大変ですよーフクロモモンガ 人気の裏に秘密が!?」の取材を受けて

NHK「所さん!大変ですよーフクロモモンガ 人気の裏に秘密が!?」の取材を受けて

認定NPO法人 野生生物保全論研究会 理事 並木美砂子

 番組の趣旨は「人の都合で翻弄される動物たち」になっていますが、その「都合」については丁寧に見ていく必要があります。

需要を創り出すという「しかけ」に「はまってしまう」消費者層が産み出され、その需要が高まれば高値で購入する消費者が生まれ、またそれをあてにして販売という無限のループです。「ラーテルが市場に出回る裏事情」が紹介されていましたが、まさにこの「しかけ」が露呈したのではないでしょうか。

 野生動物の輸出入に関してこの番組では「感染症の予防および感染症の患者に対する医療に関する法律」により齧歯類の輸入に厳しい制限がかかったために、シマリスやハムスターの代替物としてフクロモモンガが脚光をあびているというストーリーを展開していますが、オーストラリア本国では自国の野生動物を緊急保護目的以外は飼育することは認められていない事は紹介されませんでした。とても残念です。自国でプライベートな飼育が認められていない種が、なぜ、日本でペットとして飼育できてしまうのかに焦点をあてることは、上記のループについて熟考する機会につながったと思います。

 輸出国の衛生証明書が添付され、正規の手続きを経ての輸入はたしかに違法取引ではないとしても、その持ち込まれた動物たちがどういう環境で「買い手」がつくまで暮らすのか、「買い手」は転売目的ではないのかなど、幸せな暮らしが保証されるかどうかはまったくわかりません。給与される餌や生活の質を確保する上で何が必要なのかは、なかなか一般家庭では自己流になりがちで、その結果、命を落とす場合もあるでしょう。「違法でないからよい」のではなく、「違法かどうかにかかわらず、その動物がなぜ市場に出回っているのか」をまずは考えることが大切でしょう。

「人の都合で翻弄される動物」を減らしていく一歩は、その「人間の都合」自体を変えていくことの中にあると強く思います。インスタ映えのために手元に置かれる、いわば装飾品の代替物としての動物ではなく、「共に暮らす相手」として尊重できるペットとの暮らしが望ましく、その意味では、保護犬や保護猫との暮らしを選ぶ人がもっと増えることもあってよいかなと思います。