【CBD COP10レポート】COP10が残したもの① 生物多様性を失うことはカネを失うことだ
11月9日、COP10報告会が東京・国連大学内の環境パートナーシップ・プラザで行われました。
そこで参加者の元・環境副大臣の吉野正芳氏(自民党)は、「生物多様性を壊して経済活動をすればGDPが上がり、経済的にはプラスに評価されるが、生物多様性が失われる損失は反映されない。国家会計に生物多様性の価値を入れるべきと要望し、それが愛知ターゲットの目標2に反映された」と発言していました。
1999年に私が「環境・持続社会」研究センター(JACSES)で働いていたときに発行した『税制財政を環境の視点で考える』は、まさにそのこと、公害や自然破壊を経済ではカウントしないこと(外部経済)などを問題にした本です。
それから10年が過ぎ、経済の研究者や一部のNGOで話していたことが政策決定者である政治家の口から聞くことができました。
戦後まもなく、尾瀬ヶ原を発電用ダムとして沈める計画があったとき、自然保護運動から「電気かコケの保存か」と論争になりました。経済発展に必要な電気をコケのようなつまらないものを守るためにあきらめるのかということです。でもその後の観光地としての尾瀬の価値、下流にあたえる水温・水質・水量の影響など生態系サービスを考えれば、電気のほうが価値が低いとでるかもしれません。
こうした生物多様性の経済価値分析が政策に反映され、生物多様性の損失が止める10年にするためのスタートが切られました。
一方で算出される経済価値は生態系のすべての要素が測定できるわけではないという限界も理解して、数字がひとり歩きしないよう監視する必要性も感じています。
JWCS鈴木希理恵
生物多様性と生態系サービスは、今や人類の福祉と幸福を達成するための非常に重要なインフラだと認識されている。(P56)