【CBD COP12レポート】ブッシュミート(野生動物の肉)から考える持続可能な利用①

生物多様性条約(CBD)COP12には「生物多様性の持続可能な利用:ブッシュミートと持続可能な野生生物管理」という議題があります。この議題は、10月8日(水)に話し合われました。

●JWCSの提案

 JWCSはこの議題に関し、「国連生物多様性の10年市民ネットワーク(以下、市民ネット)」の会員として、市民ネットのポジションペーパーの中で提案をしました。
それは「野生生物犯罪と闘う国際コンソーシアム(ICCWC)などの政府間組織との協働を含む」と文言を加えるべきというものです。理由として「違法野生生物貿易取引が及ぼす問題は国家間で理解が進んでいるので、犯罪取り締まりの枠組みで国際協力を進めることは愛知ターゲット達成に効果的である」と書きました。
 ICCWCとは、2010年11月に結成された、CITES、インターポール、国連薬物犯罪事務所、世界銀行、世界税関機構による組織です。
 草案では「ロンドン宣言を認識し」や「CBDとCITESの協力」としか書かれておらず、具体性に欠いていました。
 ロンドン宣言とは、野生生物の違法取引が国際的な犯罪組織や、武装集団の武器購入の資金源になっているため、それを国際社会が封じ込めることを目的に開催された国際会議の成果です。

●ワーキングループ2での議論

 では会議ではどのような意見が出たのかを、メモから抜粋してご紹介します。
 
グアテマラ
ブッシュミートに関するいくつもの研究を実施しており、管理に関しては、漁業とブッシュミートに関する法令を有している。
 
アフリカグループを代表してコンゴ民主共和国
 
ブッシュミートはアフリカの大きな関心事項である。ブッシュミートはILC(先住民・地域社会)のおもな食糧である。コンゴ民主共和国は管理に関する戦略を多く有しており、サブ地域(※)も戦略を策定している。アフリカは決議案を支持する。とくに、One Health アプローチ(人間も動物も健康)を支持している。新たな文言を追加することを提案する。「技術的、人的な支援を求める」という決議を提案する。 能力構築に関してILCへの言及がない。事務局はその点を明記すべきである。
※「アフリカ」に対する「中央アフリカ」などさらに分割した地域
 
ボリビア
段落8(技術や現状分析の協力)に関して、技術的なガイダンスが必要。「関係者が関与した技術的な支援を求める」という表現に変更することを求める。また新たな段落を提案する。包括的な野生生物管理を求める。伝統的知識の価値を認識する必要がある。
 
ブルキナファソ
決議案を支持する。ILCの関与が重要。30%の地域にILCが住んでいる。野生生物の多くは保護地域内で失われていることに留意する。
 
 
EU
CBDとCITESの協力を強調する。持続可能な管理に関するパートナーシップは重要だと信じている。また、関係者間で情報共有することが重要だと考えている。EUには情報を共有するための「クリアリングハウス」がある。私たちは、違法な狩猟がその土地の社会などに悪影響を与えていることを懸念している。これらをきちんと反映させてほしい。
 
中国
決議案を支持する。このブッシュミートは持続可能な開発にとって重要である。私たちは、各締約国と協力していく。
 
エクアドル
自然の権利憲章を有しており、第2章において狩猟が許されている。
 
エジプト
アラブ諸国の代表として発言する。決議案を支持する。愛知目標2、4、5、6、14が関連している。ブッシュミートはILCの生活と関連している。しかし、違法な取引などが、国内のGDPと比較して相当数あることを懸念している。
 
FAO
ブッシュミートを優先的な課題と位置づけ、地域事務所と協力している。包括的で横断的なアプローチが推奨される。ILCが野生生物と共生して生活していることを強調する。
 
 このように大きな反対はありませんでしたが、ILCへの配慮とCITESとの連携が機能するよう求める発言が複数ありました。

 
(鈴木希理恵 JWCS事務局長 / 議事記録:小林邦彦 JWCS愛知ターゲット3委員会・名古屋大学大学院環境学研究科 博士後期課程)