【CITES CoP14】決まったこと
◆附属書改正提案の結果
CITESで規制される種のリストを変更する議案(附属書改正提案)の結果は、次のとおりです。
提案1 スローロリス(提案国:カンボジア) 附属書ⅡからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案2 ボブキャット(オオヤマネコ)(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱから削除
→否決
提案3 ヒョウ(提案国:ウガンダ) (原)附属書ⅠからⅡへ移行(50頭の年輸出枠)
→撤回(ただし、附属書Ⅰのまま年間28頭の輸出枠付で輸出をする提案(附属書改正提案ではない)として出しなおし→可決)
提案4 アフリカゾウ(提案国:ボツワナ・ナミビア) (原)ボツワナ、ナミビア、南アフリカ、ジンバブエのゾウについて象牙の年間輸出枠付輸出
提案5 アフリカゾウ(提案国:ボツワナ) (原)ボツワナのゾウについて在庫象牙40トンの1回限りの輸出、それに続く年8トンの輸出枠付象牙輸出等
提案6 アフリカゾウ(提案国:ケニア・マリ) (原)20年間の象牙輸出停止
→(修正)提案4.5.6に対する修正として条件付1回限りの政府在庫輸出→コンセンサス採択
(アルジェリアは、全体会で昨年の後半の半年で500頭のゾウを失ったことと、この厳しい状況への支援を求めた。)
提案7 アフリカゾウ(提案国:タンザニア) タンザニアのゾウを附属書ⅠからⅡへ移行
→撤回(会議前)
提案8 ビクーニャ(提案国:ボリビア)附属書Ⅰ掲載は維持しつつ、3つの個体群由来という限定を撤廃し、全個体群由来の毛製品を輸出
→コンセンサス採択
提案9 アカシカの亜種(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→否決
提案10 エドミガゼル(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→コンセンサス採択
第Ⅰ委員会では否決されていたが、アルジェリアが全体会での討議再開を求めた。ケニアはEUが反対したために第1委員会で敗れたと述べた。コンセンサスで再開後、EU原産国のすべてが支持しており、取引の影響についても十分説明を受けたので、賛成すると発言。附属書Ⅰへの掲載となった。
提案11 ドルカスガゼル(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→撤回
提案12 リムガゼル(提案国:アルジェリア) 附属書ⅢからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案13 クロカイマン(提案国:ブラジル)附属書ⅠからⅡへ移行
→コンセンサス採択
提案14 メキシコドクトカゲ(提案国:グァテマラ)附属書ⅡからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案15 ニシネズミザメ(提案国:EUを代表してドイツ)附属書Ⅱへ掲載
→否決
提案16 アブラツノザメ(提案国:EUを代表してドイツ)附属書Ⅱへ掲載
→否決
第Ⅰ委員会で否決されていたが、EUが全体会での討議再開を求めた。アイスランドの要求による秘密投票で再開が可決された後、討議が行われ、アイスランドの要求による秘密投票が行われた結果、48%賛成でまたも否決。
提案17 ノコギリエイ科全種(提案国:ケニア、アメリカ)附属書Ⅰへ掲載
→1種を生きたものを受け入れ可能かつ適切な箇所に保全の目的で取引する場合に限定して附属書Ⅱに掲載、残りの種は附属書Ⅰに掲載と修正し、可決
提案18 ヨーロッパウナギ(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→可決
提案19 Banggai cardinalfish(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案20 アメリカイセエビ(提案国:ブラジル) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案21 サンゴ属全種(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱへ掲載
→否決
第Ⅰ委員会で化石サンゴを除く修正後、可決されていたが、全体会で、秘密投票の結果、討議再開。その後日本が要求した秘密投票の結果、52%賛成で再度の可決となった
提案22 Agave arizonica(提案国:アメリカ) 附属書Ⅰから削除
→コンセンサス採択
提案23 Nolina interrata(提案国:アメリカ)附属書ⅡからⅠへ移行
→コンセンサス採択
提案24 Pereskia spp. and Quiabentia spp.(提案国:アルゼンチン) 附属書Ⅱから削除
→コンセンサス採択
提案25 Pereskiopsis spp.(提案国:メキシコ) 附属書Ⅱから削除
→コンセンサス採択
提案26 Cactaveae spp. and Orchidaceae spp.(提案国:スイス) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引が規制される部分・派生物の範囲を一部拡大
→修正後コンセンサス採択 関連決定あり
提案27 略(多数の分類群にわたる)(提案国:スイス(植物委員会の求めによる)) 取引が規制される部分・派生物の範囲を拡大
→コンセンサス採択
提案28 Shortia galacifolia(提案国:アメリカ) 附属書Ⅱから削除
→コンセンサス採択
提案29 Euphobia spp.(提案国:スイス) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引が規制される部分・派生物から一定の形態と大きさのものを除外
→修正後コンセンサス採択 関連決定あり
提案30 Caesalpinia echinata(提案国:ブラジル) 附属書Ⅱへ掲載
→修正後、コンセンサス採択
提案31 Dalbergia retusa(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案32 Dalbergia stevensonii(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回
提案33 Cedrela spp.(提案国:EUを代表してドイツ) 附属書Ⅱへ掲載
→撤回 関連決定あり
提案34 Orchidaceae spp.(提案国:スイス) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引規制対象から種間、属間のハイブリッドを除外
→否決
提案35 Orchidaceae spp.(提案国:スイス(植物委員会の求めによる)) 附属書Ⅱの掲載を維持しつつ、取引が規制される部分・派生物の定義を単純化
→コンセンサス採択
提案36 Taxus cuspidata (提案国:アメリカ) 取引規制対象から人工的なハイブリッド、栽培変種を除外
→撤回 関連決定あり
提案37 Taxus chinensis, T. cuspidate, T. fauna and T. sumatrana(提案国:スイス(常設委員会の求めによる)) 1種について、取引規制対象から人工的なハイブリッドを除外
→修正後、コンセンサス採択
◆CITES CoP14の結果の評価
CITESの問題は大きく、ポリシー(政策)、履行と執行、個々の種にかかわる問題に分かれます。
このブログでは、象牙取引、トラ、スローロリスなど個々の種にかかわる問題を中心に報告してきましたが、合間にそれ以外の話題もできるだけ紹介しました。そこからチラリと感じていただけたかどうかわかりませんが、今回の会議は、実はCITESのポリシー(政策)を大きく問うものでした。キーワードは、CITESと「暮らしあるいは生計(livelihood)」でした。暮らしというと漠然としていて、生計というと(暮らしを立てるための)お金と露骨に聞こえますが、後者のニュアンスがピタリときます。CITESは、条約立法の精神が死ぬか生きるかという節目にあるのです。このあたりの評価は、まとめて次号会報(別刷版)で詳しく論じてみようと思っています。