野生生物犯罪

野生生物犯罪の根絶に向けたを国際協力

 野生生物犯罪には野生動物の密猟、ランなど野生植物の違法採取、森林の違法伐採、違法漁業などとその違法取引があります。そしてその規模は、森林の違法伐採と違法取引が年間300~1000億ドル、違法漁業が110~300億ドル、野生動植物種の密猟・採集と違法取引が70~230億ドルと推計されています。注1)
 そして近年野生生物犯罪は、多国籍の犯罪ネットワークが関与する、組織化された世界規模の犯罪に変わってきました。その収入は、たとえば武装集団の資金源になり、紛争や虐殺を引き起こし、汚職、贈収賄など社会の腐敗の拡大を招いています。そして生物多様性を喪失させ、自然資源に依存する地域の人々のくらしを脅かします。

 このような野生生物犯罪が国際社会に与える影響の増大から、2014年2月には野生生物犯罪の防止のための国際会議が英国で開かれ、日本を含む46カ国が参加して「ロンドン宣言」新しいタブまたはウインドウで開きますが採択されました。
ロンドン宣言では、野生生物製品を違法に取り扱う市場の根絶、有効な法的枠組みと抑止力の保証、法執行の強化、持続可能な生活と経済発展の4種類のアクションを挙げています。
 このように、国どうしの協力に加え、国連機関や国際団体、ワシントン条約・生物多様性条約などが協力して、野生生物犯罪の防止とその背景にある途上国の人々の暮らしの問題に取り組む動きが加速しています。

注1)UNEP, INTRPOL (2014).『The Environmental Crime Crisis - Threats to Sustainable Development from Illegal Exploitation and Trade in Wildlife and forest Resource』p.19.PDF

 
 

アフリカの紛争と象牙

 アフリカの治安を脅かす武装集団は、象牙の違法取引で資金を得て武器を調達していると言われています。とくに密猟の激しかった2011年は1年間でアフリカゾウ全体の7.4%が違法に殺されました。2012年、2013年も高い頻度で密猟は続き、年間2万頭をこえるゾウが密猟されました。すでに島状にしか分布していないアフリカゾウにとって、大変な脅威です。注2)
 そしてその象牙は、東アジアの国々に密輸されていることがDNA鑑定などで明らかになっています。日本への密輸も毎年見つかっています。東アジアでの需要がアフリカの悲劇を引き起こしているのです。注3)
 ロンドン宣言ではアクションの一つに「密猟、違法取引又は需要を促進させかねない、誤解されやすく、誇張された又は不正確な情報の利用に対抗することによって、絶滅のおそれのある種から作られた製品への投機を最小限にとどめること」(A Ⅶ)を挙げています。
 JWCSは、絶滅のおそれのある野生生物の製品を買うことにより、野生生物と人のくらしに与える悪影響について普及啓発活動を行っています。

注2)UNEP, CITES, IUCN, TRAFFIC (2013) Elephant in the dust - The African elephant crisis. p.19(Elephant population distribution).PDF
注3)Status of elephant populations, levels of illegal killing and the trade in ivory:SC65 Doc.42.PDF

 
 

スローロリスの違法取引

 スローロリス類は東南アジアの森林に生息する夜行性のサルです。森林伐採や密猟のため絶滅の危機にあります。そのため2007年9月13日からワシントン条約で国際取引が原則禁止(附属書Ⅰ)になりました。
 国際取引が禁止される以前も、スローロリス類はワシントン条約で輸入に許可が必要な動物(附属書Ⅱ)でした。さらに2005年以降は人間と動物で共通の感染症を防止するため、ペット目的のサルの輸入は禁止されています。それにもかかわらず附属書Ⅱの動植物種は国内に入ってしまえば規制の対象にならないため、多くのスローロリス類が密輸されていました。

 スローロリス類がワシントン条約附属書Ⅰに掲載されると、国内法の種の保存法により国内の流通が規制され、密輸は減少しました。種の保存法の効果があった事例と言えます。
 現在では、スローロリス類が附属書Ⅰになった2007年9月13日以前に輸入した、もしくは日本で生まれたと登録した個体しか、売買や販売目的の陳列、無料であげることができません。

 2013年6月に、死んだスローロリスの登録票を流用した違法取引で逮捕者が出ました(オピニオンブログ 2013年6月22日記事 参照)新しいタブまたはウインドウで開きます。登録票の不正使用を防ぐには、スローロリス類を1頭1頭見分けるための情報を登録することが重要です。
 JWCSはこのスローロリスの件を例に、2014年5月、環境省が募集したパブリックコメントに「種の保存法施行規則等の改正案に関する意見」PDFを提出しました。
 またスローロリス類の種の見分け方は、スローロリス類の保護団体「Little Fire face Project」が研究し、「識別ガイド」を発行しています。

 ▪スローロリス識別ガイド最新版(日本語訳・印刷用)PDF

 絶滅危惧種をペットとして飼うことは、日本の国内法では合法であっても、需要を喚起し、現地の野生生物に影響を与えます。例えば、ペットのスローロリスの動画をインターネットに投稿したことが、密輸を促しているという研究があります。注4)
絶滅危惧種をペットとして飼うことは、間接的に犯罪に加担する可能性があることも考慮する必要があります。

注4)K. Anne-Isola Nekaris, Nicola Campbell, Tim G. Coggins, E. Johanna Rode, Vincent Nijman (2013) Tickled to Death: Analysing Public Perceptions of ‘Cute’ Videos of Threatened Species (Slow Lorises - Nycticebus spp.) on Web 2.0 Sites.」PDF

スローロリス属の生体の日本への合法輸入頭数の経年変化
図1:スローロリス属の生体の日本への合法輸入頭数の経年変化(出典:CITES Trade database)

スローロリス属の生体の密輸頭数と件数の経年変化
図2:スローロリス属の生体の密輸頭数と件数の経年変化(出典:財務省 ワシントン条約該当物品輸入差止等実績)

 

日本でのスローロリス取引の問題を指摘した論文公開

ペットにされるスローロリス今月上旬、英国にあるオックスフォードブルックス大学の研究者による二つの論文が専門誌に公開されました。二つの論文はどちらも日本でペットとして飼育される絶滅危惧種のサル、スローロリスについてのものです。そして当会はその論文の1でつ日本での違法取引に関する調査に協力しました。
(スローロリスの違法取引についてはこちらから)

JWCSが調査に協力した論文(英文)新しいタブで開きますは、スローロリスの販売に必要な登録票のない個体のネット広告を出していたり、規制前の2007年9月以前に取得した登録票を掲示して若いスローロリスを売っていたりした事例を挙げています。
この論文は2月4日の東京新聞など日本の地方紙とJapanTimes、英国のTimes紙、9日のTBS「Nスタ」などで報道されました。

もう一つの論文(英文)新しいタブで開きますは、日本のスローロリスの飼い主が投稿した動画から、動物福祉の世界基準に反する不適切な飼育がされていることが分かった、というものです。スローロリスがストレスを受けていることを知らずに、リツィートしたり、FACEBOOKでシェアしたり、「いいね!」するなどよい評価が集まると、これがスローロリスの自然の姿だという誤解を招いてしまったり、SNSサイトが動画の削除に応じなくなる可能性があります。また動画の人気は違法な国際ペット取引を促してしまうのです。
そのため、現在実効性のある規制強化や絶滅危惧野生動物のペット飼育に対する認識を改めることが求められています。

 
 

密輸に関する法律・参考情報

関税法(財務省)新しいタブまたはウインドウで開きます
 関税法第111条により許可のない輸入は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方が科されます。

外国為替及び外国貿易法(経済産業省)新しいタブまたはウインドウで開きます

税関 輸入差止実績新しいタブまたはウインドウで開きます
 ワシントン条約対象種で、許可なく輸入しようとして税関で差し止められたものの一覧が掲載されています。

密輸情報提供サイト新しいタブまたはウインドウで開きます
 密輸情報の提供を呼びかける税関のウェブサイトです。

野生生物に関する国内法制度

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律(通称:種の保存法、環境省)新しいタブまたはウインドウで開きます
 ワシントン条約附属書Ⅰの掲載種は「国際希少野生動植物種」として販売等が規制されています。2013年7月から罰則が強化されました。密輸・違法販売は5年以下の懲役、500万円以下の罰金、法人では1億円以下の罰金になりました。

動物の輸入届出制度(厚生労働省)新しいタブまたはウインドウで開きます
 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 第54条でサルなどリスクの高い動物は「禁止動物」に指定されています。

動物愛護法(環境省)新しいタブまたはウインドウで開きます
 動物の愛護及び管理に関する法律 動物取扱業者は都道府県・政令市に登録し、登録番号の表示が必要。販売するときは購入者に対して現物確認・対面説明をすることが義務付けられています。

外来生物法(環境省)新しいタブまたはウインドウで開きます
 特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律 外国産ペットを野外に放したことが、生態系へ悪影響を及ぼしたり、農林水産業に被害をあたえたりすることがあります。特定外来生物を販売目的で飼うと3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、法人の場合は1億円以下の罰金を科されます。

 

☆ご支援のお願い

 野生生物犯罪の防止には警察機関だけでなく、ワシントン条約の関係省庁(経産省・環境省・農水省・外務省)、税関(財務省)、都道府県、種の同定などのための動植物園など専門機関、国際機関などさまざまなセクターとの情報交換が重要です。また知らずに野生生物犯罪に加担してしまう一般消費者に向けての普及啓発活動も重要です。
 NGOは、行政の組織も国境も越えてタイムリーに活動できるのが特徴です。
 しかし上記のスローロリス保全行動計画策定のための調査では、資金が確保できず、東京以外の都市に聞き取り調査に行くことができませんでした。
 NGOだからこそできることがあります。ぜひご支援をお願いいたします。

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